>> diary index: 09 「幾万の真言」


  2011/06/01
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>> 2011/06/01 (配信枠#161〜#166)



 自称特別捜査隊の面々と遊び倒し、気付けばもう3月20日。明日には、転勤生活から戻ってくる両親の下へ帰らなくてはいけない。
 堂島さんにも促されたし、この1年で絆を深めた人々(=コミュMaxを達成した人々)に最後の挨拶に町に出よう…。


 まずは、学校。
 そう言えば、一番最初にはモロキンから“落ち武者”呼ばわりされた。久保美津雄の開幕天城超え挑戦ぶっぱからの逆ギレ逃走とかも今となっては懐かしいな……。

 直斗はしばらく八十稲羽に残り、自分たちの手で守り抜いたこの町を見守っていくそうだ。俺たちとの――俺との出会いは、孤独だった直斗の問題をしっかりと解決できたらしい。彼女とすぐ会えなくなるのは心苦しいが、これが今生の別れになるわけじゃない。会いに行こうと思えば会えるのだし、声が聞きたければいつだって聞ける。腕時計に仕込まれたGPSは測定不能を返すだけになるかもしれないが、距離なんて関係ないさ。

 そして、1年間自分が慣れ親しんだ教室、机――……に、圧倒的存在感を放つ生徒が座っていた。
 いっそしんみりと自分の席で1年間の出来事を思い返したかったが、どうにもこういうのは厄介だ。……彼女――大谷さんには悪いが、……そっとしておこう。


 商店街。
 そう言えば、りせのパパラッチだったあの男にはとてつもない迷惑を掛けたが、彼はどうなったのだろう?

 千枝は、警察官になることを目指してこれから励むようだ。大事なものを守るために強くなりたい、と彼女はかつて言った。大事なこの八十稲羽を守るために、警察官になりたい…。彼女が駆け回るなら、きっと安心だろう。堂島さんもいるのだし、いい警察官として活躍するだろう。

 りせは芸能界への復帰に向けてトレーニングに励んでいる。ただ休業していただけじゃない、そう見せつけるつもりなのだろうか、どうやらアルバムを引っさげて再び芸能界に殴り込むようだ。大変かもしれないが、今のりせなら大丈夫だろう。色々な自分がいることを受け入れたりせは、強い。

 家庭教師としてしばらく接した秀は、ひねて斜に構えたあの頃とは違う、まっすぐな目をした少年になっていた。あの転校生がきっかけになって、友達も増えたそうだ。明日は野球の大会があるから見送りには来られないそうだが、先生に見えるように特大ホームランを決めてやると気炎を上げていた。勉強を教えたという実感はあまりなかったのだが、ここまで大きな子になってくれると、“教師”としては誇らしいような、気恥ずかしいような…。

 キツネのいた辰姫神社は、どうやら賽銭泥棒や野良キツネなどの問題のせいで、取り壊されてしまうことになったそうだ。居心地の良い場所だっただけに、残念で仕方ない。
 しかしあのキツネは、ここに訪れた俺の前に姿を見せてくれた。しかも、子供まで増えている。…子供までサイズぴったりのよだれかけを着けているのは、多少気になったが…。

 完二は、自分の特技を活かして、巽屋で手芸教室を開くことにしたそうだ。出会った頃なら恥ずかしがって必死になって否定したのだろうが、今の完二はすっきりと笑って自分の趣味に胸を張っている。色々と屈折した後輩だったが、根がまっすぐで良い奴だよ、お前は。

 …そう言えば、商店街によくいる男性から、カーメンこと祖父江先生と交際している…というような話も聞けた。あの人のノリについていくのは大変だろうなあ…。


 商店街から出るバスで、何とはなしに病院に向かった。
 この病院に務めていた上原さんは別の場所へと越していったのだが、ナースの話によると、今はNGOとしてアフリカで活動しているそうだ。どこまで人を助けられるのか、救えるのか、徹底的に自分で考え抜いた結果、そうしたのだろう。最初会った時は妖しい人だと思ったが、今では尊敬できる人の一人だ。どうも、忘れられそうにない。
 …それにしても、俺はあの人の彼氏扱いだったのか。そんなつもりは全くなかったのだが、噂話と人との距離というものは、どうにも測りにくい…。

 その足で、天城屋旅館にも顔を出した。雪子は、少しずつ天城屋を背負って立つ女将への階段を登っている。“本当に自分の手でここにいる皆を守っていけるのか”と不安がる雪子は、それでも全力で立ち向かうことを堅く決心していた。離れてても一緒なのは、お互い様だ。こっちだって、7人も置いていくのは苦しいくらいなのだから。


 ――そして、ジュネス・フードコート。
 よく考えると、陽介との出会いは散々なものだった。…主にあいつが。テレビの中に入る際、模造刀や鉈をここで振り回して警備員に取り押さえられたり、みんなでここで作戦会議をしたり、勉強したり、雑談に花を咲かせたり……
 陽介とクマは、俺がいないこの町を想像できないと言う。確かに、たった1年間だけだったとは言え、ここであったことはあまりに濃厚すぎた。いい親友とも出会えたし、思い出も数えるには時間がかかりすぎるほどだ。
 …まあ、今更懐かしい懐かしいと語ったって仕方ないだろ、相棒?


 一度フードコートを出はしたが、どうにも後ろ髪を引かれて、もう一度足を踏み入れた。
 ……特捜本部。
 本当に、ここには色々な思いが詰まっている。
 感傷に浸っていると、陽介達が声を掛けてきた。千枝も雪子も、果ては後輩の3人も、自然とここに集まってきたのだ。

 本当に、長かった。
 長かったけれど、殺人事件は全部解決しきった。

 だが、まだ腑に落ちない点がある。
 マヨナカテレビは、一体誰が作り出したのか。
 そして、アメノサギリを倒したにもかかわらず、テレビの中の世界には、まだ霧が立ちこめている。

 アメノサギリはペルソナ能力を持つ者にテレビに入る力を与えたと言ったが、俺と生田目、足立の三人はテレビに入る力に気付く方が早かった。マヨナカテレビの噂は誰がばらまいたのかも分かっていない。
 ふと、家を出る時に菜々子から受け取った手紙のことを思い出した。差出人は見ていなかったが、足立が拘置所からわざわざ送ってきてくれたもののようだ。足立も、マヨナカテレビの噂がどこから発生したのか、突き止めることは出来ていなかったという。ただ、気付いたらその噂を耳にしていた、という話だった。
 陽介は、まだ裏に何かが隠れていそうだと言う。確かに、噂の広まり方、殺人事件、そしてそれを解決した俺たち……裏に何もないとすれば、余りに話がうまく出来すぎている。

 そう、だ。この町に来て一番最初に会ったのは、……あの、どうも不思議な雰囲気の、雨の日にしか現れない、ガソリンスタンドの店員だった。
 あの店員と握手をしてから、俺は気分を悪くして、その夜に何かを追いかける奇妙な夢を見て――






 さて、前置きがバカみたいに長くなりましたが、本日の配信が最終回!
 前回は触れなかった“真の旅路の終点”こと、本当の元凶の面を拝みに行きます。

 エンディング前半のあらすじは上の恥ずかしい一人称語りでほぼ全て語ったのでここでは省略するとして、まずは入れるようになったベルベットルームでイゴール達と話すことに。
 真実をなお追い求める意志を持つ主人公に、彼らは「見晴らしの珠」なるアイテムを授けた。虚飾を打ち払い、真実を見抜く力そのものらしい。

 ベルベットルームを出ると、そこは雨模様。
 雨だと言うことは、あのガソスタの店員もしっかりいる。
 色々と問い詰めたところ――奴が本性を現した。突然空中に浮かび上がり、帽子を脱ぎ、白装束になり、宣戦布告じみた言葉を吐いて蒸発したのだ。
 奴の名はイザナミ。奇しくも、主人公が最初に覚醒したペルソナ“イザナギ”の、日本神話における対の名だった。

 テレビの中に急行し、強大な力を追って最後の戦いへ。
 「黄泉比良坂」(よもつひらさか)――これも、日本神話でイザナギが死したイザナミを取り戻すために訪れた場所の名だったはずだ。生と死の境界となる地の名を冠したこの場所は、もしや一番最初に夢に見たあの場所だろうか。

 攻略メンバーの選定は、前回猛威を振るいすぎて強すぎることを証明してしまった千枝を外し、【主人公・直斗・完二・陽介】の4人。
 雑魚戦は全体的に即死魔法をばらまいてやり過ごすので書くこともなく、まずは三之辻で中ボス、《ネオミノタウロス》戦!


【BOSS:ネオミノタウロス】
グゥレイト! 体力だけは多いぜ!
攻撃スキルは【暴れまくり】【アタック】のみ、
実に分かりやすくて良い敵です。
要するに雑魚なんでさっさと失せろ。


 すっころばせて完二で【バスタアタック】を撃ってみたところ、何か2000とか言うふざけたダメージが飛び出して勝利。
 アタックも200ダメージを叩き出すような、火力だけは素晴らしい敵なのだが、基本的に、このあたりの戦闘は死ななきゃ安い。それにマーラ様は物理吸収のチート邪神だから死ぬ要素がないし。

 道中、もはや必要ない「祝福の手」(【神々の祝福】と同効果)を拾いながら、六之辻でさらに中ボス戦!


【BOSS:眠るテーブル】
【マハンマオン】…だと…!?
また、ネオミノタウロス含めこいつらはやけに素早く、
直斗や陽介すら先手を取られることがある。


 《眠るテーブル》の使う【マハンマオン】は、マーラ様の天敵。仕方ないのでマーラ様はひたすら【マカラカーン】で身を守りつつ、他の3人で適当にダメージを与えていく。
 結局の所、【マハンマオン】が来なければいいので、心臓には悪いものの危なげなく勝利した。


 そして九之辻――
 そこにましますイザナミは、アメノサギリは自身の分け身とでも言うべき存在だと言った。
 ともかく、コイツがいる限りこのテレビの中の世界は霧が晴れないし、いつアメノサギリのような執行者が現れるかも分からない。
 全力で、潰す…!


【BOSS:イザナミ】
現れたな、幸子EX
威力の高い単回攻撃を中心に使ってくる。


 セットアップは次の通り。

 【コンセントレイト】→【メギドラオン】等、高威力の攻撃こそ使ってくるものの基本的には単回行動。要するに死ぬ要素はほとんど無いのでガン攻め。
 長期戦になってしまうのでSPやアイテムが消耗される。余りに弱すぎて第二形態の存在を疑ったので、倒す前に「ソーマ」を1個使っておいた。

 HPを削りきっても、なぜかイザナミは死なない。
 本当にイザナミは倒せないのかと思い至った時、「見晴らしの珠」が光を放ち、イザナミの真の姿を照らし出す…!


【LAST BOSS:伊邪那美大神】
キャストオフした幸子EXは、なんと骨ばったアンデッドのような風貌をしていた。
…“振り返ってしまった”イザナギは、イザナミの真の姿を見て逃げ帰るように黄泉比良坂を後にする。
この姿は、その神話をモチーフとした姿なのだろう。


 ぎゃあああああああああきめええええええええ!!
 ……などとは言っていられないので、まずは行動を見る。
 真の姿たる伊邪那美大神は2回行動してくるのだが、その二回行動の内訳が【メギドラオン】【黒雷】【ランダマイザ】【アグネヤストラ】マハダイン魔法等に加えて【八十神の猛り】という万能属性攻撃。属性防御はほぼ望めない。しかも【コンセントレイト】【チャージ】まで使う始末。
 主人公のマーラ様で回復をしていくのだが、【メディアラハン】を毎ターンとは言わずともそのくらいのペースで撃たなければ回復が追いつかないため、【マハラクカジャ】すら撃つ余裕がない。主人公が【ランダマイザ】を受けたらタムリン【デクンダ】しないと余裕で死ねてしまうので、このあたりは頑張ってみる。最悪の場合、【不屈の闘志】で強引に復帰も考えていたが、実際には必要なかった。
 途中から陽介の【マハスクカジャ】も交えてみたところ、割と攻撃を回避できるようになったので、こちらも積極的に使っていく。このくらいしないとマハラクカジャする余裕すらないとかどういうことなの…
 攻撃は完二の【マハタルカジャ】を起点に、陽介の【ガルダイン】で300弱のダメージが与えられる。直斗の【コンセントレイト】→【メギドラ】、完二の【イノセントタック】に任せて削り、主人公は支援に徹することにした。

 HPを削り、伊邪那美大神は【ガルガリンアイズ】でHP1+老化→【黄泉への誘い】なる即死コンボを披露。どうやら【黄泉への誘い】は【亡者の嘆き】の強化版らしく、バステが付着しているキャラに対して即死効果というふざけているにも程がある攻撃のようだ。さらに全バステを付着させる全体攻撃【世界の終焉】(当然ですが万能属性攻撃です)も追加され、攻撃は恐ろしく激しくなり、2個目の「ソーマ」も投入し…
 全ての全体回復アイテムを使い切り、辛うじて伊邪那美大神の体力を削り取った。


 伊邪那美大神は、その身に宿す呪詛か、【幾千の呪言】で執拗に主人公を狙う。
 その度に仲間が主人公をかばい、死に誘われ倒れていき、そして主人公も呪詛の海に沈む――


【真なる覚醒】
絆を真に深めた相手の心が力に変わる…

絆を真に深めた仲間達、友人達、尊敬する人――
倒れた主人公の前に、彼らの姿が現れては言葉を残し、消えていく。
その中で、絆を拠り所に再び主人公は立ち上がり、
彼固有の、深層意識を鎧う“ペルソナ”――イザナギを進化させた。


 イザナギが、伊邪那岐大神へと転生する…!
 立ち上がった主人公に伊邪那美大神は猛攻を加える(具体的に言うと【幾千の呪言】ミス→【大雷】による999ダメージの行動×4回)が、主人公はその全てを諦めずに食いしばる。
 そして、自らの目で真実を見極めるために、今まで霧を見通すために身につけていたメガネを投げ捨てた。


【幾万の真言】

人の世に満ちる全ての嘘…
幾千の呪言を吹き晴らし、
真実を射止める究極の言霊



嘘で埋め尽くされた霧の化身であるイザナミ。
自らの目で事実を見、見抜き、理解し、
そして真実へ、本質へと辿りついた主人公の前に、
イザナミは自らを形作る幾千の呪言を祓われ、
その姿を崩壊させていく。
それはさながら、神話の超克だった。


 霧は晴れる。
 人間の可能性は、人の総意を超え、神という現象とすら言えない、実体のないものすら吹き晴らしたのだ。
 テレビの中――人の心の中の世界から霧は去り、この世界も、元の美しい姿を取り戻した。

 そう、全て、終わったのだ。






 そして、3月21日。
 涙をこらえる菜々子や、向こうの世界を守るために“あちら側”へ戻るクマ、再会を期す仲間達の視線を振り切り、俺は八十稲羽を去る電車に乗り込んだ。

 泣くなよ、泣きそうになるなよ、お前ら。
 距離なんて関係ない。離れてたって変わらない。
 この町で過ごした1年間を俺は忘れないし、お前達のことだって絶対に忘れない。
 それに、ゴールデン・ウィークになればまた会える。
 だから、俺は、まだ泣かない。

 ふと、手元の写真に目を落とした。
 自称特別捜査隊の皆で撮った記念写真だ。
 全員が全員、満面の笑みを浮かべている。
 そうだ。
 俺は一人じゃない。
 いつだってあいつらがそばにいてくれる。
 ……だから、笑みは浮かべても、まだ、泣かない。



 ――PERSONA4 Fin.